

睡眠にはいくつかの生体リズムが関わっています。
生体リズムには種類がたくさんあり、それらが同期(シンクロ)してひとつのリズムにまとまっていきます。
睡眠に関わるリズムは大きく分けて3つあります。メラトニンリズム、睡眠覚醒リズム、深部体温リズムです。
さらに自律神経のリズムが重なり4つのリズムでお話をする場合もありますが、主としてこの3つを使いこなして睡眠の法則を作っています。
これらのリズムを知り、自分のリズムを定着させましょう。

菅原洋平(すがわら・ようへい)
1978年、青森県生まれ、静岡県育ち。作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事する。その後、脳の機能を活かした人材開発を行うビジネスプランをもとにしたユークロニア株式会社を設立。現在はベスリクリニックで外来を担当する傍ら、全国講演も精力的に行う。著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『「疲れない」が毎日続く!休み方マネジメント』(河出書房新社)など多数
1)第1のリズム:メラトニンリズム
みなさん、睡眠というと寝る前の話だと思いますよね。けれども、そうではありません。
朝起きたら窓際に行き、網膜で光を感知する。そうすると16時間後には眠くなります。これが、メラトニンのリズムです。
この「朝起きたら窓際に行って光を浴びる」ができれば、睡眠のメラトニンリズムを作ることができます。
2)第2のリズム:睡眠覚醒リズム
1日2回、起床の8時間後と22時間後に眠くなるというリズムです。
睡眠物質が作っているリズムだと考えられてはいますが、まだ不明なことが多く、どのような仕組みでそうなっているのかは明らかになっていません。
3)第3のリズム:深部体温リズム
内臓の温度のリズムで、内臓の温度が高いほど元気になり、低いほど眠くなります。起床11時間後が最高体温になる仕組みで、この時さらに運動をして体温を上げると、その後急激に下がるので、それだけ深い睡眠に入れます。起床11時間後に筋肉量を増やすことをしていただくと、整えることができます。
運動といっても、運動強度は低くて大丈夫です。スクワッド10回、1分程度です。例えば肛門をきゅっと締めているだけでも、猫背になりにくく、足も組みづらくなり、これだけで体温は上がります。これも“運動”です。重要なのは、頻度です。
例えば、週7日のうち休日2日+平日2日の計4日、起床11時間後に10回程度のスクワッドをしていただければ、その時間に体温は上がりますと脳に刻めるので、残りの3日はそれに同調してくれます。その程度でもリズムは形成されます。
4)起床時間を揃えて、自分のリズムを定着させる
起床時間を揃えるというのは、網膜に光を当てる時間を揃えるということです。つまりメラトニンリズムの時間を揃えるということです。
メラトニンリズムは、外から光を当てれば簡単にずれて、固定力が弱い睡眠覚醒リズムはすぐに同調してきます。
ところが深部体温リズムは固定力が強く、そう簡単に同調はしてくれません。
なので、朝、網膜に光を当てる時間を決めて実行し、運動などでコツコツと深部体温リズムのペースを作っていくことができれば、1ヵ月程度ですべてのリズムが揃うはずです。
5)第4のリズムと二度寝のリスク
起床時間を揃えることでリズムを作りやすいもうひとつの理由は、朝を超過すると脳がダメージを受けやすいという仕組みにあります。
これには、4つめの自律神経のリズムが関係しています。
朝の起床3時間前からコルチゾールという物質が血圧を上げていき、頭を起こしても重力に対抗して脳に血を集める準備をしています。
人間は二足歩行なので、頭を起こすこと自体が、かなりリスキーなことです。そのために3時間準備をしてきてようやく朝を迎えるのですが、起きなかった、二度寝しました、と頭が横になったままだと、コルチゾールが1回上がったのに下がって、起きるのかと思ったら起きなくて……と行ったり来たりします。
本来コルチゾールは一気に上がったら一気に下がっていなくなります。それが、日中でも残ってしまう。コルチゾールが増えると記憶を司る海馬の神経細胞を死滅させてしまうのです。
二度寝で3時間以上寝だめすると、起きてから色々なことが面倒になったり、妙にイライラして不機嫌になったりすることがあります。
起床3時間以上のズレがない人は、ほとんどメンタル不調を起こしません。
つまりメンタル不調は、起床のずれによって起きているという考え方もできるのです。
自分で神経細胞を死滅させているのだから、物忘れや、メンタルの不調も起きるでしょう。そういうことを回復しよう、疲れを取ろうとして、週末に寝だめをする人が少なくありませんが、その考え方を変え、朝の起床時間を揃えましょう。
6)二度寝は絶対にダメ、なわけではない
二度寝が有効に働くということはまずありません。が、もし二度寝をする場合は、3時間以上の差はつけないことを心がけてください。
そして、脳に光が届いていればいいので、太陽の光が当たるところで寝ていればリズムはずれません。
目を閉じていても光は届きます。頭を起こすために3時間も準備しているのだから、頭が起きていればいいのです。
要するに、座って寝ればいいのです。
二度寝しちゃダメ、というと一気にやる気がなくなりますが、そうではなく、明るい窓際に座って二度寝をすればいい。
こういう二度寝の方法は、リズムの仕組みを分かっていればできるわけです。
メカニズムを知ることの意義はそこにあります。生活上に「これをやってはいけない」というものを作らせない。
「それをやるためには、こんな方法がありますよ」と提案していくために、生体リズムの仕組みを学ぶのです。そうすれば解決策は出てきます。
構成:村上美香
企業情報
株式会社Yume Cloud Japan
本社
〒992-0119 山形県米沢市アルカディア1-808-46
山形大学有機材料システム事業創出センター内
Tokyo Office
〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町1-8-1
茅場町一丁目平和ビル8F
FinGATE KAYABA
Yume Cloud Inc.
440 North Wolfe Road, Sunnyvale, CA 94085